活動報告

実施報告:北大道新アカデミー2024後期理系コース

第8回「原子や分子の世界をのぞく顕微鏡と情報科学」2024.11.9(土)
末岡 和久教授(情報科学研究院)

講義では、ナノスケールの領域で起こる物理的・化学的現象を基に新たな材料やデバイスを創出する研究について学びました。具体的には、走査型トンネル顕微鏡(STM)や原子間力顕微鏡(AFM)を用いて半導体の表面構造や微細な特性を観察し、それが半導体デバイス開発などにどのように役立っているのかの解説がありました。
STMでは、トンネル効果という量子力学の原理を応用して、シリコン基板やさまざまな半導体材料の表面をナノメートル単位で詳細に観察できます。また、AFMは原子間の引力等を利用して、表面の凹凸や材料の特性を調べることが可能で、微細な構造を持つ半導体デバイスにとって重要な役割を果たしています。
これらの顕微鏡技術によって、従来の製造技術では観察できなかったナノレベルの情報を取得でき、先端半導体の開発が加速しています。

第7回「ロボットを身に着けてみる世界」2024.10.26(土)
田中 孝之教授(情報科学研究院)

今回の講演では、人にとってちょうど良いモノづくりに焦点が当てられ、人間がロボットを身につけることで獲得できる機能の拡張などについて学びました。研究室では、アシストスーツをはじめとした「身につけるロボット」技術を開発し、介護や農業分野での実用化が進んでいます。また、センサ、コントローラ、アクチュエータから成るロボット技術を活用し、筋力を補助することで、人の健康維持と作業効率向上を目指す試みが進行中です。さらに、加齢に伴う体力の衰えや、腰痛のリスク軽減にも寄与し、労災予防への応用も実現されてきています。ロボット技術を通じた持続可能な働き方を支援する取り組みは、日本の超高齢化社会において注目されており、今後の展開が期待されています。

第6回「ゲノム情報解析からわかること」2024.10.12(土)
小柳 香奈子准教授(情報科学研究院)

今回の講義では、遺伝情報解析をテーマに、ゲノムの基本構造や機能、さらにコンピューターを用いた解析手法について学びました。まず、ゲノムとは何か、ヒトを含む生物が持つ遺伝情報がどのように構成されているかについて解説しました。次に、DNAの配列を解析する技術の歴史を振り返りながら、バイオインフォマティクスの発展についても触れました。
講義では、ゲノム解析によって得られる具体的な情報の実例を紹介しました。環境DNAを活用した生物調査や、個人のDNA解析による体質や病気リスクの予測、さらにはイネの品種改良への応用など、ゲノム解析の多様な活用例についても学びました。
最後に、ゲノム解析にはコンピューターや高度な情報解析技術が不可欠であることを確認し、講義の学びを締めくくりました。

第5回「AIと進化論をモノづくりに活かす」2024.10.5(土)
五十嵐一教授(情報科学研究院)

理系コース第5回目の五十嵐教授の講義では、「進化論と人工知能を用いた最適化技術」について、事例を交え紹介されました。特に、進化の原理を模倣した遺伝的アルゴリズムが問題解決において非常に効果的であることや、複雑な計算問題を効率的に解決する方法として、従来の膨大な計算時間を大幅に短縮できることなど、ディープラーニングを活用した最適化技術により、製品設計の効率が劇的に向上する可能性が示されました。
しかしながら、現在の技術水準では、まだ誤差を完全に排除することができないという課題が残っています。今後の課題として、この誤差をどのように克服するかが重要な焦点となると締めくくられました。

第4回「デジタルで世界を視るということは何か?」2024.9.28(土)
池辺将之教授(量子集積エレクトロニクス研究センター)

理系コース第4回目は、量子集積エレクトロニクス研究センターの池辺将之教授から、アナログとデジタルの違いのカメラ技術や、画像処理、半導体の基礎まで幅広い内容の講義が展開されました。
池辺教授の講義では、アナログが連続的なデータを扱う一方で、デジタルは時空間の分断を前提とする点であると説明がありました。また、高級カメラとスマホカメラの違いを解説し、スマホカメラが画像処理技術で高級カメラのような効果を生み出す工夫についての話もありました。
最後に、イメージセンサーの仕組みやAI技術を用いた深度情報の取得と画像補完についても詳しい紹介があり、とても内容の濃い講義となっていました。

第3回「社会と調和する人工知能」2024.9.21(土)
横山想一郎助教(情報科学研究院)

理系コース第3回目は、大学院情報科学研究院の横山想一郎助教から、AI技術を用いた意思決定支援の研究について講義が行われました。
横山助教は幼少期にコンピューターに魅了され、情報学の道を志したと語ります。所属する「調和系工学研究室」では、多様な価値観を持つ人々が集団として意思決定を行う際に、AIを利用して選択肢の利点やリスクを伝える技術を研究しています。
具体的な事例として、競輪の車券購入支援や、俳句を自動生成する「AI一茶くん」が紹介されました。さらに、帝国議会の議事録を解析するプロジェクトも行っています。近年、ChatGPTのような生成AIの進歩により、AIは複雑な問題に対応できるようになりました。しかしながら、意思決定の最終責任は人間にあり、AIはその支援ツールとして活用されるべきだと締めくくられました。

第2回「人工知能とことばの理解」2024.9.14(土)
ジェプカ ラファウ(Rzepka Rafal) 准教授(情報科学研究院)

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第1回「誰のために情報システムを作るのか?」2024.9.7(土)
坂本大介准教授(情報科学研究院)

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