挨拶

山本文彦

北海道大学理事・副学長 
大学院教育推進機構機構長

北海道大学では、リカレント教育を推進するために、大学院教育推進機構の中に、リカレント教育推進部を設置し、学内外の多くの皆様にご協力いただきながら、種々の取組みを進めています。関係する皆様に改めて御礼申し上げます。

リカレント教育に対する社会のニーズは、かなり広範にあると考えています。そして学びたいと思う方々の目的もまた多様だと思います。その上、無料で自由に視聴できる多くのオンライン講座等もあります。大学がどのようなリカレント教育を実施するのか、しっかりと考えなくてはなりません。

他方、大学内に目を向けると、なぜ大学がリカレント教育に取り組む必要があるのか、学生の教育や研究あるいは管理運営等の業務で忙しく、リカレント教育を担当する時間がない、という意見も多くあるのではないかと思います。

大学は、日本の教育システムの中の最後の段階として、高校を卒業した学生を受け入れ、社会に送り出す機能を果たしています。しかしこれだけが大学の役割ではありません。大学がどのような社会的役割を果たすべきなのかを考える過程で、大学として目指すべきリカレント教育の姿が見えてくるのではないかと考えています。

リカレント教育推進部は、こうした根本的な問いに向き合いながら、さまざまなプログラムを推進していきます。多くの皆様のご協力をよろしくお願いいたします。

川本思心

リカレント教育推進部部長

北海道大学は12の学部を擁する総合研究大学であり、その美しいキャンパスは観光地としても有名です。そしてすでにリカレント教育と呼べるプログラムが複数存在していました。私たちリカレント教育推進部はこれらの資源を活かし、貴重なノウハウをもつ先行プログラムから学び、支援していくとともに、新たなプログラムを立ち上げていきます。

その際、私たちは「研究 Research」をキーワードにしていきます。この言葉は、いわゆる研究室でのアカデミックな活動を指しているわけではありません。ひたすら価値ある知を探求する、そのための方法論を生み出す、自らの活動をメタ的に捉えて協働する、そういった活動を指す言葉であり、あらゆる学びの中心にある言葉なのです。つまり、北大のリカレント教育では、単に既存の今必要とされている知識を受け取るのではなく、主体的に学び、そのための新たなコミュニティを作り出すことを軸に据えていきたいと考えています。

プログラムにおいて重要なことは、北大だからこそ提供できる潜在的な社会ニーズに対応した先端的・学際的なプログラム内容、転用可能な学びの方法論、そして職場・現場に戻った後で周囲に学びを広げられる姿勢・技法です。そして忘れてはならないのは、仕事や生活と両立できる、プログラムを受けやすい制度・環境をつくっていくことでしょう。

これらを実現するためには、教員はもちろん、大学全体があらためて「教育」を再定義する必要があります。逆にいえばリカレント教育という新たな挑戦を通して、本来の大学の教育を取り戻すということかもしれません。従来の大学教育は、さまざまな学内外の既存制度、事務職等の支援といった基盤のうえで、教員は授業だけに専念すればよい、というものだったかもしれません。しかし、リカレント教育においてしばしば耳にする「社会のニーズへの対応」を重要視するならば、企画・広報・支援業務などの、教育プログラム本体に付随する、しかし学ぶ当事者にとっては本質的に重要な要素を一体的にとらえてプログラムをつくっていかざるを得なくなります。なぜならそここそが、大学が社会や受講者のニーズを知ることができる界面だからです。

やるべきことは山積していますが、北海道大学に再び集い、学ぶ皆様のために、スタッフ一同奮励努力して参ります。