活動報告

情報科学研究院 坂本 大介先生
北大道新アカデミー2024後期理系 第1回

  • 北大道新アカデミー2024年度後期 理系コース
  • 2024年9月7日(土)開催
  • 「誰のために情報システムを作るのか?」
  • 情報科学研究院 坂本 大介 准教授

私たちが日々使うパソコンやスマートフォン、ロボットといったテクノロジーは進化し続けています。しかしながら、使いこなせる人が限られているのが現実です。「ヒューマンコンピューターインタラクション(HCI)」は、人とコンピューターの間で生まれる‟相互作用(インタラクション)”を研究する分野です。

9月7日(土)、2024年度後期理系コース第1回講義として、北海道大学大学院情報科学研究院准教授の坂本大介先生が「誰のために情報システムを作るのか?―『使いやすさ』のためのユーザーインターフェース」と題して、HCIに関するご自身の研究について、様々な事例を交えながら講義を行いました。

ロボットとHCI研究

ロボットとパソコン、スマートフォンの違いは物理的に手足があるかどうかです。ロボットは体を動かして情報を伝達できるため、人間との相互作用が可能です。この特性を活かし、ロボットとどのように効果的にコミュニケーションするかを探るのがHCIの研究のひとつです。
HCIの研究は特に、コンピューター作業のしやすさに焦点を当てています。OECDの調査によると、日本の成人の約7割がICTの利用に困難を感じ、Excelの関数を使いこなせるなどの「レベル3」のスキルを持つ人は全体のわずか8%です。このレベル3は、Excelでデータを処理し、Wordに貼り付けるなど、複数のアプリケーションを連携して作業を進める能力を指します。しかし、全体の4割近くはコンピューターをほとんど使いこなせていません。この現状を踏まえ、HCIの研究は、技術向上だけでなく、誰もが使いやすいシステムを設計することを目指しています。

フォントサイズ調整の実験:Yahoo!ニュース

坂本先生が取り組んだ具体的な事例の一つに、Yahoo!ニュースでのフォントサイズの調整があります。Yahoo!ニュースは多くの人に利用されていますが、フォントサイズの最適化についてはあまり検証されてきませんでした。そこでHCIの視点から、最適なフォントサイズを探るための実験が行われました。
実験では、従来の16ピクセルのフォントサイズと、調整した17ピクセルを比較し、ユーザーの読みやすさや理解度を検証しました。得られたデータを分析した結果、フォントを1ピクセル大きくすることで、ユーザーが記事をより深く読むことが明らかになりました。この小さな変更が約8000万人のYahoo!ニュース利用者に大きな影響を与え、読みやすさを向上させました。
現在、坂本先生が注力しているのは、コンピューターが「賢い」とは何か、どうすればユーザーにとって賢いと感じられるかを探り、それをデザインしていくことです。
ユーザーが困っている点に対してどのように対応するか、さらにはユーザー自身がまだ気づいていない課題に焦点を当てて、「こうすれば生活がもっと便利になる」という視点から研究進めています。

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