文学研究院 吉開将人先生
北大道新アカデミー2024前期文系 第1回
北大リカレント教育推進部と道新文化センターが実施組織として開講している「北大道新アカデミー」の前期が4月6日(土)からはじまりました。
2024年度前期文系コースは、文学研究院の教員8名が「戦争と平和 人文社会科学の視点から考える」をテーマに講義をします。
初回は20世紀中国の歴史が専門の吉開将人先生でした。吉開先生は学生時代の1989年に中国に旅行に行き、チベットで戒厳令を経験しました。それが中国の歴史・民族問題を研究している現在につながっているとお話して、講義をはじめました。
吉開先生は、政変に敗れて日本に一時亡命していた梁啓超(1873-1929)、北京大学改革を行った蔡元培(1868-1940)、その弟子である傅斯年(1896-1950)といった政治家・歴史学者を例に挙げながら、清朝末期から中華民国建国、満州事変、日中戦争、国共内戦、中華人民共和国建国といった動乱の時代において、戦争と歴史学はどのような関係にあったのかを紐解きました。
中国は、西洋列強や日本との関係のなかで、中国という国の正統性や領域を示すために歴史学や歴史地理学、歴史書の編纂を重視してきました。民族の捉え方も多民族から、蒋介石による「黄帝の子孫」論に現れるひとつの中華民族という概念へ変化していきました。
吉開先生は、戦争等の政情が不安定なときこそ歴史学に大きな動きがあること、そして歴史学が政治に翻弄されると、学問としての正しさが二番手になっていく危険性を指摘しました。現在の中国も、哲学や歴史学といった人文系学問を国際戦略的に重視し始めていることが指摘され、その意味を20世紀前半の歴史を参考にして考えるべきであるという問題提起がなされました。一方、日本においては関係性の冷え込みにより、学生の中国歴史学研究の人気も低下しているそうです。中国を分析できる日本の研究者を維持することが重要だと最後に吉開先生は指摘されました。
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