実施報告:北大道新アカデミー2026前期理系コース(工学研究院)
フロンティアエンジニアリング - 未踏の領域を切りひらく技術
技術のフロンティアは、いつの時代も過酷な環境と向き合う場所にあります。風や波、雪や自然災害、そして地政学リスクや人口減少社会への対応——これらを可能にするためには、基礎科学に基づき、環境と社会を実際に制御するという工学的アプローチが必要です。工学研究院の6人の研究者が多様な視点から先端事例を紹介します。
第1回「3次元地図とロボットで支える未来社会」2026.4.11(土)
江丸貴紀准教授(工学研究院 機械・宇宙航空工学部門)
日本は現在、深刻な人手不足に直面し、多方面で社会維持が困難になりつつあります。例えば、大根の選果場での外国人労働者への依存や、老朽化する社会インフラの維持管理、さらに札幌市では年間300億円に達する除雪費用の増大などの課題があります。これらの事例をあげた江丸准教授は、課題解決のために多種のセンサーで3次元の地図を作る仕組みと、それによって的確に動くロボット技術の研究開発や実証実験に取り組んでいます。

第一はドローンの活用です。レーザーで距離を測るライダー(LiDAR)や、詳細な色の違いがわかるスペクトルカメラといったセンサー技術を組み合わせて、危険な防波堤の点検や、農作物の収量予測、広大なバナナ園での病害虫検知などを研究しています。第二は積雪環境下の自動運転です。AIを用いて吹雪による雪雑音を除去し、視界不良でも安全に走行する技術や、夜間の過酷な歩道除雪作業における人検知システムの開発を進めています。第三は、除草剤が使えない薬草栽培のための除草ロボットで、AIが作物と雑草をリアルタイムで識別し、自動で引き抜くシステムを構築しています。
江丸准教授は、講義の最後に本コースのキーワードである「フロンティアエンジニアリング」とは何かを示しました。それは、単に技術的に「できること」を追うのではなく、社会の困り事に対して「必要なこと」を現場に合わせて研究し、現場・社会を止めずに続けられるようにするための工学である、とお話されました。工学の力で社会インフラを支え続けるビジョンが示された講義でした。