活動報告

先端生命科学研究院 相沢智康先生
北大道新アカデミー2024前期理系 第3回

2024年度前期理系コースの第3回目は、大学院先端生命科学研究院教授の相沢智康先生です。この前期理系コースは「生物と物質の間 改めて「生命とは何か」を問う」の共通テーマに講義を行います。4月27日に開催した3回目は、生命を支える「タンパク質」分子の役割についてと題し、講義が行われました。
相沢先生の講義では、生命の根本的な要素であるタンパク質に関して話題提供がありました。タンパク質は、生物学的に非常に重要な分子で、生物体の構造や機能に関与しています。タンパク質はアミノ酸と呼ばれる分子が結合してでき、その構造は一次構造(アミノ酸の配列)、二次構造(αヘリックスやβシートなど)、三次構造(立体構造)、そして四次構造(複数のタンパク質が集合した構造)に分類されます。
また、タンパク質は多岐にわたる機能を持っています。例えば、酵素として化学反応を促進することや細胞の構造の形成や、情報の伝達、免疫反応の調節などの役割を果たしています。筋肉を構成するタンパク質である筋タンパク質や、抗体などの免疫系を構成するタンパク質もあります。
さらに、タンパク質は遺伝子の情報をもとに合成されます。遺伝子はDNAに記録され、DNAからRNAへの転写、そしてRNAからタンパク質への翻訳という過程を経てタンパク質が合成されます。
簡潔に言うと、タンパク質は生物の機能と構造を支える重要な分子であり、さまざまな生命現象において中心的な役割を果たしています。
講義では、相沢先生から「DNAは生物の遺伝情報を含む分子であり、遺伝子の設計図として機能します。一方、タンパク質はDNAからの指示に基づいて作られ、生物のさまざまな機能を担う役割を果たします。タンパク質が身体の基本的な構造要素だけでなく、アミラーゼなどの酵素やロドプシンなどの目が光を吸収するタンパク質など、重要な役割も果たしています」と解説がありました。
また、講義の中でノーベル賞受賞者の下村先生の話題になり、下村先生は純粋な興味から、なぜクラゲが緑色に光るのかを研究したことや、その結果、タンパク質が緑色の発光を引き起こす役割を果たすこと、そのタンパク質はGFPとして知られるようになったことなどの説明がありました。
現在、GFPは、細胞内を観察するために使われる科学技術に応用されています。このタンパク質を用いると、細胞を緑色に発光させたり、赤色に発光させたりして、生命現象を観察することが可能です。
下村先生の功績は、その応用性からノーベル賞を受賞しました。彼の研究は細胞や生命現象の理解に大きな貢献をし、今も世界中の科学者によって活用されています。
この話は、純粋な科学的興味が大きな科学技術の発展につながることを示す良い例です。基礎的な研究への投資の重要性や短期的な経済的利益だけではなく、長期的な価値を見据えた研究に対しての投資も必要があるとわかる事例です。
タンパク質の研究は、基礎研究としての重要性はもちろんですが、その応用もまた非常に重要です。タンパク質は、工業や医療などの様々な分野で活用されています。
工業用酵素は、洗剤や歯磨きなどの製品に利用されています。例えば、油汚れを分解する酵素を洗剤に配合することで、効率的な洗浄が可能です。
また、診断薬にもタンパク質が活用されています。抗体と呼ばれるタンパク質を利用して、特定の病原体や分子を検出することができます。これにより、コロナウイルスなどの感染症の診断が行われています。
さらに、抗体医薬としてもタンパク質が注目されています。抗体を外部から投与することで、免疫系を活性化させたり、がん細胞を攻撃したりする治療法が開発されています。これらの治療法は、現在世界中で研究が進められています。
最後に相沢先生は、「タンパク質の何かを知るということは、生命とは何かを知ることに近づくことです。 さっきタンパク質はアルファベットで表せるという話をしました。僕としてはまず、ABCを知ることが第1歩になります」と講義を締めくくりました。

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