オープンイノベーションを体感し、社会実装へ【修了生インタビュー vol.3】
リカレントで学んだ方々に、受講のきっかけや成果を伺うインタビュー記事。第3回は、企業でお仕事をしながら、CLAPこと医療AI開発者養成プログラムの社会人向けコースで学んだ、保坂真奈美さん(日本電気株式会社)のお話をお伝えします。

保坂真奈美さん
医療AI開発者養成プログラム(CLAP)インテンシブコース 2024年度修了生プロフィール: 日本電気(株)コンサルティングサービス事業部門リードデータサイエンティスト。SEを経て、10年以上にわたりデータ活用のコンサルティング業務等に従事。2024年度にCLAPインテンシブコース(現・リカレント教育コース)を受講。
——お仕事の内容を教えていただけますか
私はNECでデータサイエンティストとして、AIの社会実装に取り組んでいます。具体的には、AIを導入したいと考えるお客様に対して、技術支援やシステム開発を行うのが主な仕事です。これまではコンビニ、製造業、自治体といった多様な業種に向けた支援をしてきましたが、近年は医療分野への関心が高まり、医療AIにも注力しています。
——なぜCLAPを受講したのでしょうか
医療AIに取り組もうと考えたのは、医療分野がAI活用の可能性を大きく秘めていると感じたからです。日本は医療課題先進国とも言われ、現場にはまだ多くの未解決課題が残っており、AIの実装が求められています。ただ一方で、医療分野特有の難しさからAI導入が進みにくい現状もあります。そこに挑戦したいと考えました。
CLAPを選んだ理由は三つあります。第一に、ビジネスから離れた中立的な視点を得られること。第二に、実践的なカリキュラムであること。そして第三に、双方向のコミュニケーションの機会が豊富であることです。それから、私は東京からの参加でしたが、どうせ学ぶなら札幌でおいしいものでも食べながら勉強したい、という本音も実はありました(笑。
——受講して特に印象的だったことは何でしょうか
一言でいえば、なぜ医療AIが難しいのか、その理由の一端を知ることができたと感じています。例えば製造業での画像分析では、AIが製品の傷を判別しやすくするために画像加工を行うことが一般的ですが、医用画像ではそれが医学的意味を損ねることがあります。また、製造業では気にしないことも多い施設間バイアスが、医療では大きな問題になることもあります。医療機関ごとに使用機器や患者層が異なるのです。
データサイエンスの定番の手法そのままでは、医療分野では通用しない場合が多い、その事実を知ったことが大きな収穫でした。
——受講後に得た成果はありますか
私のような民間企業の人材がCLAPを受講する意義は、やはりオープンイノベーションということだと思います。利害関係を離れて多様でオープンな対話の場というのは、なかなか貴重です。
実際に、CLAPで出会った北大保健科学研究院の先生方と共同研究に向けた具体的な動きも始まっています。また、生成AIを活用した病院経営を支援するサービスの実証実験を始めたり、予防健康領域のシンポジウムへの登壇依頼があったりと、新たな視点を得て、実績も重ねられるようになっています。
——医療AIの課題と意義をどう考えていますか
生成AIを使えばコードは書けますが、それだけでは社会実装には至らないのではと考えています。社会実装を実現するためには、多様な立場の方々との対話と共同を通じて課題を解決するプロセスが必要です。
それには多くの困難がありますが、それを乗り越えて社会実装に至ったという時の達成感はすごく大きく、やりがいがあることだと信じています。これからも多くの人と協働しながら、社会実装に挑んでいきたいと思っています。
※本記事は2025年5月24日に開催されたCLAP受講説明会での講演を再構成したものです。